以前、奥田晶子さんを取り上げましたが、同じくジャン・ミシェル・ルフェーヴルの編曲による演奏でシャンソンのレコーディングをおこなった歌手として杉田真理子さん(当時は”杉田真理”の名で活動)がいます。
杉田さんは現在も歌手として活躍されていて、毎月第一金曜日に四谷三丁目にある「ウナ・カンツォーネ」というお店で、古坂るみ子さんとともに「るみまりの部屋」と銘打ってショーを開催されているほか、パリ祭などの公演に出演されています。近いところでは2024年9月14日に開催される「9人のDIVA あの名画のヒロインを歌う」、2024年12月4日に開催される「二代目クイーンのフォアカード Vol.2」というイベントに古坂さんとともに出演される予定になっています。
この気の合うお二人が毎月開催するイベントは、ファースト・ステージは二人がそれぞれ3曲ずつ、続いてゲストの方が4曲を歌い、休憩をはさんだセカンド・ステージは同じパターンで10曲とゲストの方のアンコール曲が披露されるというスタイルで、曲の合間にお二人のどっちがボケともツッコミともつかない楽しいトークを繰り広げる、休憩込みで2時間半程度のステージとなっています。
杉田真理子さんはビクター時代にCDアルバムを2枚リリース後、アッチェルランドという事務所に所属してからは、前田憲男さん、羽田健太郎さんらとのセッションなどを通じて、ジャズや映画音楽などレパートリーを広げ、キングレコードから4枚のCDを発売しています。ウナ・カンツォーネでのステージも、そんな広いレパートリーの中から「バンクーバ」「灰色の途」のようなジャン・ミシェルの編曲でレコーディングされた頃の曲から「シェルブールの雨傘」「ダニー・ボーイ」まで、イージー・リスニング・ファンにもなじみの曲を、昔と変わらぬ柔らかくも繊細な歌声で聴かせてくれます。
杉田さんと同じ1987年からシャンソン歌手として活躍されている古坂るみ子さんは、文学座の俳優として数多くの舞台やドラマで活躍されていただけあって、繊細な表現力で歌いあげるところが魅力の方です。
実は私が古坂さんの名を知ったのは、ある方から「霧のオルリー」という曲の存在を教えられたことがきっかけでした。この曲は、1974年にパタシュウという人が歌い日本にも紹介された曲なのですが、これに詩人の藤井優子さんが訳詩をつけ、2003年の古坂さんのコンサートで初めて披露され、以降、古坂さんの重要なレパートリーになっています。
YouTubeで探して聴いて驚きました。歌詞の行間から浮かび上がる空港内外の情景の移り変わりとその間に起こったひとときの出会いと別れのドラマ…。そして、その女性主人公になって夢と現実が交錯するように歌い上げる古坂さん。これはナマで聴いてみたいと思っていたところ、ウナ・カンツォーネで杉田真理子さんとともに定期的にコンサートを開催されていることを知り足を運ぶようになり、先日、聞かせていただく機会を得ました。
ゲストでお見えになる方もおふたりの交友関係の広さが表れた個性豊かな方ばかりです。そういった方々により歌われるシャンソンや日本の歌謡曲を聴いていると、耳なじみの曲ながら今まで感じなかった新たな魅力に気づかされることもありますし、素敵なメロディの曲に出会うこともあります。
私もそんな素敵な曲を、こちらの「イージー・リスニングとフレンチ・ポップスと」コーナーで引き続き取り上げていきたいと思います。