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「死の舞踏」「化石」とポール・モーリア

 今回のジャン・ジャック・ジュスタフレの来日公演で「死の舞踏」が演奏されました。この作品は、一度だけポール・モーリア・グランド・オーケストラの来日公演で演奏されたようですね。その演奏の原曲であるサン=サーンスの交響詩「死の舞踏」の主題部分は、後にサン=サーンス自身が作った「動物の謝肉祭」という曲集の中に入っている「化石」という曲にも使われました。
 「動物の謝肉祭」という曲をよくご存じでない方のために説明しますと、この作品集で一番有名なのはチェロで演奏される「白鳥」です。サン=サーンス自身も「この曲だけは出版していい」と言ったようですが、他の作品はかたくなに拒否したそうです。というのも「ピアニスト」という音楽家を皮肉った動物が出てきたり、「カメ」の歩みののろさを表現するため、あの有名なオッフェンバッハの「天国と地獄」のカンカンをゆっくりゆっくり演奏するなどしていて、全体としては余興的な、冗談音楽的な作品集だからです。(往々にしてプロコフィエフの「ピーターと狼」とセットでCD化されますが、全然違う音楽なんですね。)
 「化石」もその中の1曲です。「死の舞踏」以外に「きらきら星」「セヴィリアの理髪師」など知られた曲が散りばめられ、これら過去の作品を古びた化石として皮肉っているわけです。自分の作品である「死の舞踏」をメインにすえるあたりは、自分の作品も先輩の作品同様やがてそうなっていくであろうことを意識しているのでしょう。(実際に評判が悪く、既に忘れられつつあったようですね。)
 譜面に残された音楽を楽器で演奏する「再現芸術」というものがある一方で、ポール・モーリアのサウンドをベースにして新たな音楽を追究していこうとするジャン・ジャック・ジュスタフレ。ジャン・ジャックがポール・モーリアの音楽を化石にしたくない、という思いでこの曲を選んだ、というのは深読みしすぎでしょうか。(深読みですね。)

[2013.05.22 up date]