P.1986
TOSHIBA-EMI
CP32-5339
Transitions(日本盤タイトル『愛の情景』)
これまでのフランク・ミルズの雰囲気とは全く違います。シンセサイザーの可能性に着目して挑戦したアルバムのようで、最初の曲「心の町」からしてピアノは出てこず、何の紹介もなしに聴いていたら「これ、誰の演奏?」という感じです。ただ、こういうベースにパーカッションを組み合わせた演奏は雰囲気がいいので、一般ウケはするでしょう。(イージー・リスニング・ファンとしてはこんなイージーなサウンドは好きではありませんが。)9曲めの「嵐の中の恋」を聞けば、「あ、これってフランク・ミルズの「暴風雨警報」のメロディだ」と気づき、やっと「そう言われれば、そんな雰囲気も残ってるね」という感じです。
フランク・ミルズは何かの雑誌のインタビューでリチャード・クレイダーマンのことをどう思うかという質問に対して、彼のスタイルでは限界がある、といった発言をしていた記憶があります。確かにクレイダーマンは作曲もアレンジも全くおこなわない"ピアノ弾き"としての立場を全然くずさずデビュー以来活躍しているのですが、逆にそのことでいろいろなアーティストとのコラボや世界各地の音楽をどんどん吸収していけたわけで、結果的にはそれがマーケット的には成功することになります。
そして、フランク・ミルズ自身も次の「マイ・ピアノ」で完全に昔のスタイルに戻ってしまうどころか、クレイダーマンの演奏だと言われても否定できないくらいそっくりなスタイルの演奏まで登場してしまうことになります。
(2018/12/16)
1. Heart Of The City / 心の町
2. Seascapes / 早春の海辺
3. Sketches Of New England / ニュー・イングランドのスケッチ
4. Shadows Of The Dancer / 一人ぼっちのダンサー
5. Signs Of Conflict / 悲しい瞳
6. Diamond In The Rough / ダイヤモンドの贈り物
7. Island Hopping / アイランド・ホッピング
8. Let's Not Leave This Way / 愛の誓い
9. Storm Warning / 嵐の中の恋
10. Transitions And Triumphs / 涙のラスト・テーマ