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 ニコール・リュウがバークレーに残した作品集

Marianne Meldie(FR)
発売日:2019年
Amazon.frで購入可

Les années Barclay 1974-1979 / Nicole Rieu

 ニコール・リュウの名前を知っている人は、よほどのフレンチ・ポップス・ファンですね。一番の有名曲は、1975年のユーロヴィジョン・ソング・コンテストで4位となった「そよ風の贈りもの(スターを夢見て)」でしょう。ルフェーヴルが『幻想のアリア』のアルバムの中で取り上げた演奏が抜群に素晴らしいのですが、ニコールが歌うオリジナルも甘い歌声が優しいメロディと相まってすばらしい作品に仕上がっています。実は、ルフェーヴルはもう1曲、ニコール・リュウの作品を演奏していて、それは『エマニエル夫人』のアルバムに収録されている「その男」という曲です。
 この2枚組のアルバムは、この手のちょっとマニアックな作品集をいろいろ手がけている、フランスのマリアンヌ・メロディという通販専門の会社がリリースしたもので、ニコール・リュウがフランスのバークレー・レコードに残した全作品が収められています。我々が知っている曲とすれば、先の2曲に加え「マホガニーのテーマ」「そよ風の誘惑」「レット・イット・ビー」以上の5曲でしょう。もちろん、ちゃんとユニバーサル・ミュージックの音源を使っており、音もいいのですが、それに加えて発売月やジャケット写真、アレンジャーなどのデータなども詳しく掲載されていて、非常に参考になります。
 一番驚いたのは「そよ風の誘惑」のアレンジャーが、ジョン・フィディというフランク・プゥルセルとずっといっしょに仕事していたアレンジャーだと記載されていたことです。この人、ノーマン・キャンドラーがやってるソノトーンという業務用BGMのレコード会社にいくつかの録音をおこなっていて、さすがプゥルセルと仕事しただけあって、ストリングスが美しいオーケストラ演奏の作品を残しています。そして、そのジョン・フィディこそがオリジナルであるオリビア・ニュートン・ジョンの「そよ風の誘惑」のアレンジャーでもあるのです。(オリビア・ニュートン・ジョン『そよ風の誘惑』のアルバム・ジャケット裏に記載されている)つまり、ニコール・リュウは、オリジナル曲と同じアレンジャーによる演奏でレコーディングしたということになるわけで、そういった予備知識を持ってふたりの歌を聴き比べてみると、また違った楽しみがあります
 収録されているのは全部で50曲。知らない曲でも、いいアレンジをした、いいメロディの曲が次々と流れてきます。フランスの歌は贅沢ですね。
(2020.03.08)