Marcury 0602567410744
Love Unlimited Orcheatra / 20TH CENTURY RECORDS
自らが歌手であり、三人組女性歌手「ラヴ・アンリミテッド」のプロデューサーでもあり、そしてオーケストラの指揮・編曲まで手がけるというマルチな才能を発揮していたバリー・ホワイト。このCDは、彼が率いたラヴ・アンリミテッド・オーケストラによる演奏のうち、20世紀レコード社から45回転30cm盤を含むシングル盤としてリースしたA面/B面全てのトラックを収めた作品集。当然だが、30cmLPに収録された音源とは別にシングル盤向けにミキシングされたトラックがあれば、そちらをきちんと収録するぬかりのなさ。たとえば、このCDの「愛のテーマ」の演奏時間は3:39で、これまで発売されてきたCDに収録されてきた演奏より30秒ほど短く、「ラプソディ・イン・ホワイト」も2:58と1分以上も短い。そういう意味ではおそらく初CD化も多く含まれているはずだ。また、日本では「愛のテーマ」(1974年2月10日:HIT-2131)のB面はラヴ・アンリミテッドの「恋のお陰で」だったことからそのタイミングで陽の目を見ず、以降どのオリジナル・アルバムにも収録されなかったことでレアな存在となっていた"Sweet Moments"や、Disco Versionの曲など、なかなか聴くことの難しかったバージョン違いの演奏が楽しめるのもうれしい。そこまでやるのなら、せっかくなのでシングル盤ジャケットの写真くらい載せてくれてもいいと思うのだが、そこは残念ながらペラペラのジャケットに、英文字だけのライナーノートという簡素なつくり。他の盤に比べて音質も改善されているだけに、もう少し手をかけても良かったように思う。
それにしても、当時の音楽プロデューサーはすごかった。"My Suite Summer Suite"を「白銀のテーマ」とか、"Hey Look At Me, I’m In Love"を「シクラメン、それは過ぎ去りし歓び」という曲名にしてしまうこの強引さ。今の時代なら怒られそうだが、メディアでのアピール方法も限られていた当時としては、バリー・ホワイトの世界観を少しでも多くの人に気付いてもらおうとする手法のひとつだったと考えたら涙ぐましい。「白銀のテーマ」は、アルバム発売が12月だったから仕方なくやったんだろうなあ。シュプールを描きながら軽快に滑り降りるスキーヤーをイメージしたのだろう。
当時、私が持っていたアルバムのライナーノートに、評論家の方が「このオーケストラの演奏を初めて聴いた時、ミキシングがまちがってるんではないかと思った。」と書かれていた。真ん中に定位して歌うように演奏される分厚いストリングス群を、左右からリズム楽器やエレキギターがサポートする、そして実際のステージでもそんな楽器配置だったという音づくりは、ディスコが流行する遙か前の1973年末としては超画期的なサウンドとして迎えられたことだろう。「愛のテーマ」が航空会社のCM曲として絶大な印象を残し、「ラプソディ・イン・ホワイト」は、当時いろいろな意味で挑戦的な番組だったTV番組「ウイークエンダー」のテーマ曲に使われるなど、まさに時代の最先端を行くサウンドだったのだ。後に同じソウルのジャンルでオーケストラ曲「ハッスル」「アフリカン・シンフォニー」といったヒット曲を放ち、「愛がすべて」で知られるヴォーカル・グループ「スタイリスティクス」をプロデュースしたヴァン・マッコイも、おそらくバリー・ホワイトの影響を多く受けたことだろう。ぜひ多くの人に、こんなサウンドが1970年代始めに存在していた、ということを知っていただきたいものだ。
※上記で述べたように、シングル・バージョンやディスコ・ミックス・バージョンは演奏が違っていたり、微妙にミキシングが違っていたりする場合があります。収録曲一覧に書かれているアルバム名は、同じ音源が収録されている30cmLPアルバムという意味ではありません。
(2018.09.01)
Disc 1
1. Love’s Theme / 愛のテーマ
2. Sweet Moments
3. Rhapsody In White / ラプソディ・イン・ホワイト
4. Barry's Theme / バリーのテーマ
5. Theme From Together Brothers / トゥゲザー・ブラザーズのテーマ
6. Find The Man Bros. / ファインド・ザ・マン・ブラザーズ
7. Baby Blues / ベビー・ブルース
8. What A Groove / ホワット・ア・グルーヴ
9. Satin Soul / サテン・ソウル
10. Just Living It Up / 楽しくいこうぜ
11. Always Thinking Of You / 君への想い
12. Forever In Love / フォーエヴァー・イン・ラヴ
13. Only You Can Make Me Blue / メイク・ミー・ブルー
14. Midnight Groove / 愛の嵐
15. It's Only What I Feel / 愛の感触
16. My Suite Summer Suite / 白銀のテーマ
17. Theme From King Kong (Part 1) / キング・コングのテーマ(パート1)
18. Theme From King Kong (Part 2) / キング・コングのテーマ(パート2)
1,3,4,7,8:from the ALBUM "Rhapsody In White" P.1973
/ キングレコード GP-329『ラプソディー・イン・ホワイト』(1974/5/10発売)
2:from the 7", Single "Love's Theme / Sweet Moments" P.1973
5,6:from the ALBUM "Together Brothers (Original Motion Picture Soundtrack)" P.1974
/ キングレコード GP-340『トゥゲザー・ブラザーズ』(1974発売)
9-11,13:from the ALBUM "White Gold" P.1974
/ キングレコード GP-349『ホワイト・ゴールド』(1974/12/25発売)
12,14,15:from the ALBUM "Music Maestro Please" P.1975
/ キングレコード GP-412『愛のテーマ(パートII)』(1976/2/21発売)
16:from the ALBUM "My Sweet Summer Suite" P.1976
/ キングレコード GP-465『白銀のテーマ』(1976/12/21発売)
17:from the ALBUM "Super Movie Themes - Just A Little Bit Different" P.1979
/ キングレコード GP-692『スーパーマン〜スーパー・ムービー・テーマ』(1979/5/21発売)
Disc 2
1. Brazilian Love Song / 愛のサンバ
2. Hey Look At Me, I’m In Love / シクラメン、それは過ぎ去りし歓び
3. Whisper Softly / 月見草、それはもの言わぬ恋
4. Don’t You Know How Much I Love You / 愛の花束
5. Theme From “Shaft” / 黒いジャガー
6. Theme From “Superman” / スーパーマンのテーマ
7. My Suite Summer Suite (Disco Version) / 白銀のテーマ
8. Theme From King Kong (Disco Version) / キング・コングのテーマ
9. Blues Concerto / ブルース・コンチェルト
10. Brazilian Love Song (Disco Version) / 愛のサンバ
11. Don’t You Know How Much I Love You (Disco Version) / 愛の花束
12. Hey Look At Me, I’m In Love (Disco Version) / シクラメン、それは過ぎ去りし歓び
13. Theme From “Shaft” (Disco Version) / 黒いジャガー
14. Theme From “Superman” (Disco Version) / スーパーマンのテーマ
1,9:from the ALBUM "My Sweet Summer Suite" P.1976
/ キングレコード GP-465『白銀のテーマ』(1976/12/21発売)
2-4:from the ALBUM "My Musical Bouquet" P.1978
/ キングレコード GP-560『愛の花束』(1978/4/21発売)
5,6:from the ALBUM "Super Movie Themes - Just A Little Bit Different" P.1979
/ キングレコード GP-692『スーパーマン〜スーパー・ムービー・テーマ』(1979/5/21発売)