New Discs

 ヴァイオリニスト川畠 成道によるスクリーン・ミュージック

Victor
VICC-60874
P. 2014 (Recording:Nov. 2013)

ムーン・リヴァー 川畠成道 映画音楽を弾く

 今年でデビュー15周年を迎える川畠成道による映画音楽集。彼はもちろんクラシックの演奏家ではありますが、こういったポピュラー作品に対しても真正面から取り組んでいることが伝わってくる演奏です。ご自身が書かれたコラムをまとめた新書本『耳を澄ませば世界は広がる』の中で「ひまわり」「シンドラーのリスト」やアルゼンチン・タンゴなどに挑戦してきた、といったことが書かれていますが、そういったベースがあるからこその演奏なのでしょう。タンゴの曲「ポル・ウナ・カベサ」のような表情豊かでキレの良いリズムに乗った作品から「裸の島」や「シンドラーのリスト」のように静かに聴かせる演奏まで、様々なヴァイオリンの響きを堪能できます。ヴァイオリンの演奏ばかり16曲並んでいても、1曲1曲が個性豊かな違ったタイプの作品ですし、編曲のスタイルや演奏技法も変えていますので聴く人を飽きさせません。
 川畠さんは著書の中で影響を受けた好きな演奏家、作曲者、編曲者としてクライスラーを挙げていますが、そのクライスラーがアンコールで小品を演奏し観客を喜ばせている様子を見て、軽やかなポピュラー音楽とクラシック演奏を融合させた音楽を指向してオーケストラを結成したのがムード・ミュージックの王様、マントヴァーニでした。マントヴァーニの父もスカラ座歌劇場管弦楽団のコンサート・マスターでしたし、マントヴァーニ自身がヴァイオリンを手にしたのもロンドンに移った後の14歳の頃だったといいます。川畠さんの本を読んでいて、ふと、そんなことを思い出しました。
 常に新しい挑戦を続けている川畠さんが、さらに大きく自身の領域を広げていってくれそうです。
(2014.3.23)

Disc 1

01. Smile / スマイル〜モダン・タイムス
02. Il Ferroviere / 鉄道員
03. Moon River from "Breakfast At Tiffany's" / ムーン・リヴァー〜「ティファニーで朝食を」
04. Gabriel's Oboe from"The Mission" / ガブリエルのオーボエ〜『ミッション』
05. Sunrise, Sunset "A Fiddler On The Roof" / サンライズ・サンセット〜「屋根の上のヴァイオリン弾き」
06. Theme from "East Of Eden" / エデンの東
07. La Strada / 「道」より
08. Cinema Paradiso - Theme / ニュー・シネマ・パラダイス
09. String Sextet No.1 Op.18 - 2nd mov. / 主題と変奏ニ短調 Op.18
10. Por una Cabeza / ポル・ウナ・カベサ
11. Gymnopedie No.1 / ジムノペディ第1番
12. 裸の島
13. The Terry's Theme from "Limelight" / テリーのテーマ〜ライムライト
14. Schindler's List / シンドラーのリスト
15. Cavatina (Theme From 'The Deerhunter') / ディア・ハンターのテーマ
16. Rhapsody On A Theme Of Paganini, OP.43 / パガニーニの主題による狂詩曲 Op.43