ルフェーヴルが演奏した曲の原曲のコレクションを続けている者として、探し当てられていない曲が何曲かあり、その中で、どうしても聞きたい曲として「エデンの少女」があった。この曲、キングレコードから発売されたLPのライナーノートを読むと、レオ・ミシール"Léo Missir"作曲、パトリシア・カルリ"Patricia Carli"作詞で、サミー・ベネットという新人歌手が歌った、ということしか情報がない。フランスでヒットした、と書かれているものの、当時のヒット・チャートを記録した本で調べたが、少なくともその頃の月間チャートの50位以内には入っていない。さらに、原題が"little girl"であるから、検索すれば同名異曲どころか、それらの単語を含むありとあらゆる曲名が出てくるやっかいものである。
レオ・ミシールはルフェーヴルの担当プロデューサーで自身も音楽家であり、ルフェーヴルのレコーディング曲の中にもレオがアレンジをした作品が何曲か含まれている可能性があると言われている。本当かどうかはわからないが、その1曲が「イエスタデイ」の旧録音で、だからルフェーヴルが新録音で全く違うアレンジを施したのではないか、という推測までしている人もいる。
パトリシア・カルリはシンガー・ソング・ライターとして活躍し、ルフェーヴルも1965年に「ノン」という作品(日本未発表音源)、そして1983年の『デジタル・パレード』のアルバムで「さよならのメロディ」(オリジナルは1964年の作品)を取り上げている。70年代以降は作詞家としての活動が主流になり、「オー・レディ・マリー」「嘆きのサンフォニー」「天使のらくがき」など、数多くのヒット曲を世に送り出した。
ちなみに、レオ・ミシールとパトリシア・カルリは夫婦とのことだ。
とにかく、何年も前から定期的に検索をかけ続けていたのだが、何も情報が出てこない。ふと、思い立ってina.frの映像ライブラリを"Patricia Carli little girl"検索してみた。inaはフランスの古いテレビ映像のデータベースで、Raymond Lefevreと入れて検索しようものなら、900件以上もの映像が検索結果として現れる。同名のRaymondさん、Lefevreさん違いの映像もいくつかひっかかってくるが、ほとんどが我らがマエストロの映像で、その中にはTV番組「カデ・ルーセル」や「パルマレス・デ・シャンソン」で歌手の伴奏としてオーケストラを指揮しているルフェーヴル氏だけでなく、「しのび逢い」「月光のソナタ」あるいはルイ・ド・フュネスの映画音楽のようなオーケストラ演奏まで、ほとんどが無料で観ることができる。
あった!
エディ・バークレーが音楽をプロデュースする、ということについて語った映像で、その中で、レコーディング・スタジオでパトリシア・カルリが「こう歌うのよ!」とばかりにからだ全体をつかって感情たっぷりにアドバイスしている。これはすごい。ルフェーウルの演奏はサミー・ベネットの歌い方にかなり忠実にやっていることが判明。サミー・ベネットのスペリングもわかり、"Samy Benedetto"で検索してやっと見つけたジャケット写真。フランス・ユニバーサルさん、ぜひ配信してほしいなぁ。(EP盤は入手しましたが…)
※2019/7/7追記
1974年のコンサートパンフにキングレコードのディレクター河合秀朋氏が、「ルフェーヴルが第1回目から演奏をおこなっている、金のバラ音楽フェスティバルの参加曲であり、またバークレー/リヴィエラの双方のチーフ・プロデューサーでルフェーヴルの録音も担当しているレオ・ミシールが作曲した「エデンの少女」に目を付け、シバの女王に続くヒット曲を狙って、ルフェーヴルにレコーディングを依頼した。」と述べられています。
<映像はこちらから>
https://www.ina.fr/video/I05125293/eddie-barclay-parle-des-tubes-video.html
●サミー・ベネット "Little Girl"
●レイモン・ルフェーヴル・グランド・オーケストラ "Little Girl"